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【ショート・ショート】告発者の正体は? 疑心が支配する県庁の内部告発

とある地方の県庁内で巻き起こる告発者探しの狂気。

お互いを疑い、次々と名乗り出る偽の告発者たち。県知事の目的は?

果たして真実はどこにあるのか? 

目次

告発者は誰だ? 疑心暗鬼に陥った県庁の狂気と結末

とある地方の県庁内で、誰もが予想したこともなかった大騒動が起こった。

きっかけはある日の昼下がり、報道機関に届いた匿名の内部告発文書だった。その文書には、県のトップである高橋知事が密かに進めていた奇妙な計画が暴露されていた。

その計画というのは、知事自身を絶対的な存在として崇めるための「自我帝国」という壮大なプロジェクトだというのだ。

例えば、知事の存在を素晴らしいものとし、毎朝知事の写真を拝んでから業務に取り組むことを職員たちに義務付ける。また、職員は定期的に知事を褒め称えるスローガンを考え、社内掲示板に投稿するという奇妙なルールを設ける。イベントや外回りの時は、必ず、知事が欲しがったものを全て知事に渡す、等々。

そういったことが県庁の中で、高橋知事によって強引に進められているという内容だった。

知事室はこの告発を受けて震撼した。高橋知事は当然のようにこの告発を「完全なデマだ」と一蹴したが、その表情には微かな焦りが見て取れた。副知事以下、側近たちも騒ぎ立て、誰がこの告発を行ったのかを探し出すため、徹底した犯人探しを始めることに決めた。

告発者探しの狂気

この内部告発の騒ぎはすぐに県庁全体に広がった。

「告発者は内部にいる!」という言葉が県庁内で飛び交い、空気は一変した。職員たちは互いに牽制し合い、誰が告発者なのかを探るための暗黙の争いが始まった。

その中でも、特に日頃から知事を称賛しなかった職員や、スローガン提出に熱心でなかった者が次々と疑われていった。

ある職員は「最近、知事の写真を見つめる時間が短かった」と指摘されるや否や、その職員は「ただ、目が乾燥していただけです!」と弁明する羽目に。しかし、弁解が功を奏することはなく、その職員は告発者の烙印を押され、孤立してしまった。

知事の逆転劇

その頃、知事は別の計画を練っていた。

「この告発者騒ぎを逆手に取って、さらに自分の権力を強化できるかもしれない」

そう考えた高橋知事は巧妙な策略を用いて事態をコントロールしようと画策し、知事は職員たちに向けて、新たなルールを発表した。

告発者を探し出せた者には、特別に知事賞を与える」というものだ。この知事賞は、地方公務員であれば全員が憧れるものだ。なにしろ、受賞者は県内での名誉が保証され、給与も大幅にアップするという夢のような特典が付与されるのだから。

これを機に告発者探しはさらに過激化した。職員たちは競うようにして互いの行動を監視し始め、日常の些細なミスすら告発者の兆候として糾弾されるようになった。誰もが「告発者」の疑いをかけられたくないため、自己防衛に必死だった。

予期せぬ展開

しかし、ある日、一人の職員が報道機関に対して、突然自らを告発者だと名乗り出た。

彼は「もうこれ以上、疑心暗鬼に耐えられない」と語り、告発文書を自分が書いたと認めた。しかし、その後に告げた言葉が報道機関を驚愕させた。

「でも、実は告発の内容はすべて架空の話だったんです」

続けて彼が語った内容はさらに衝撃的だった。

高橋知事を崇拝する「自我帝国」計画や、毎日知事の写真を拝む儀式など、全て架空の話だというのだ。

彼はこの告発を「ただのジョーク」として作成し、世間の人々に一時の笑いを提供しようと考えていたのだ。

しかし、その軽い気持ちが結果的に県庁内に混乱を巻き起こし、告発者探しという狂気の連鎖を引き起こすとは夢にも思っていなかったと、彼は涙ながらに告白した。

狂気の果ての真実

その告白を受けた職員たちは、最初は呆然としていた。あれほど過激化した告発者探しが、ただの冗談によって始まったことが信じられなかったのだ。しかし、事態はさらに予想外の方向に進む。

「いや、本当の告発者は別にいる!」と、一部の職員が反論を始めた。

彼らは、今回名乗り出た職員が自らを犠牲にして本物の告発者を隠そうとしているのではないかと疑ったのだ。この理論は一気に支持を集め、告発者探しは新たな段階へと突入する。

なにしろ、知事を崇める諸々の作業が行われていたのは事実であり、それを本音では嫌がっていた職員が殆どだったのだから。

「この職員はただの『囮』で、真犯人を隠すためのスケープゴートだ!」と叫ぶ者まで現れ、事態は再び混迷を極めた。

さらなる告発者の影

知事はこの状況を利用しようと、自身の権力をさらに強化し始めた。

「真の告発者がまだいるなら、これ以上の混乱を避けるために名乗り出るべきだ」と知事は強く訴え、職員たちにさらに厳しい監視を命じた。

一方で、名乗り出た職員は密かに「自分が偽の告発者だと名乗り出たのも、実は知事の命令だった」と語るようになった。

これにより、今度は知事自身が疑われる立場に追い込まれた。知事が自らを守るために全ての筋書きを作り、混乱をコントロールしていたのではないかという噂が広まり始めたのだ。

終わりなき疑心暗鬼

最終的に、県庁内は再び不穏な空気に包まれ、全ての職員が互いを疑い始めた。何が本当で、何が嘘なのか、誰も信じられない状況が続いた。「実は自分こそが告発者だった」と、次々と自白する者が増えていった。

この告発劇は、もはや真実を探るためのものではなく、狂気と自己防衛の連鎖に過ぎなかった。告発者探しは終わることなく、県庁は絶え間ない不安と疑念に包まれ、真の告発者が存在したかどうかは、誰にも分からないまま、時間だけが無情に過ぎていった。

そして、県庁では今も、日々新たな「告発者」が現れる。だが、果たしてその中に真実の声が含まれているのか、それとも全てはただの幻なのか、永遠に知ることはないのかもしれない。

これが、とある地方で起こったの内部告発事件の全貌だ。

結局、真実が何であったか、誰も確信することはできなかった。疑心暗鬼と狂気の連鎖が止まらない限り、この物語は終わることなく続いていくのだろう。

そうして、疑心暗鬼と狂気の矛先から逃れられた高橋知事は今日も高笑いをしていた。

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