【マフィアシティ】豪傑の風格一覧表を更新しました

【虚構記事】それは温かい横領事件だった

横領――それは間違いなく犯罪であり、通常は厳しい罰則が待ち受けている行為だ。

しかし、そんな中に、笑わずにはいられない「憎めない横領事件」があった。

舞台はとある中小企業。
その現場では社員たちが愛してやまない「社食」が事件の中心に据えられていた。
この事件を通じて、犯罪の裏に潜むユーモラスな側面と、人間の愛情の深さを紹介しよう。

目次

伝説の「まかない費横領事件」:社食愛が生んだ憎めない犯罪

社食の虜となった男の名は

登場人物は、40代半ばの経理担当である佐藤氏だ。

彼は真面目で知られた社員であり、日々の業務をこなす姿は誰からも信頼を集めていた。
しかし、彼には誰にも知られたくない秘密があった。

――それは「社食への異常な執着」。

実は、この会社の社食は地域でも評判の美味しさで、社員たちの楽しみの一つなのだ。
社食目当てで入社を希望する人もいるぐらいだと言われているほどに。

定食メニューは日替わりで、カレーからステーキ、ラーメンまで、どれもが絶品。
特に、毎週金曜日にだけ登場する「特製ハンバーグ定食」は、まるで伝説のような存在。

社員たちはこの日を待ちわび、ハンバーグを堪能するために、
午前中は外回りや会議を入れないようにしているほどだ。

事件の発端:ハンバーグへの愛が暴走

ある金曜日、佐藤さんはいつものように「特製ハンバーグ定食」に胸を膨らませながら社食に向かった。

ところが、食堂に着くと、目の前には「完売」の札が。

信じられない光景に佐藤さんは頭が真っ白になった。
彼の心には「どうしてもあのハンバーグを食べたい」という欲望だけが広がり、
普段なら決して考えられない行動に出てしまった。

そして、その日の夜、会社の経費報告書に謎の「食材購入費」が追加された。

そう、それは社食で提供するための食材ではなく、
佐藤さんが個人的に買い込んだ「特製ハンバーグ」の材料費だった。

彼は「今日、この味を口にしなければ週末を迎えられない!」との思いから、
自宅でハンバーグを作るために会社の資金を使ってしまったのだ。

社内での発覚とその反応

事件が発覚したのは翌週の月曜日。

経費報告書をチェックしていた上司が
「この食材購入費ってなんだ?」
と首をかしげたことから始まった。

社食担当者に確認したところ、当然ながらそのような購入はしていないとのこと。
さらに調査を進めると、佐藤さんが社食用の冷蔵庫から
大量のひき肉を持ち出していたことが防犯カメラに映っていたのだ。

この件は社内で一気に大問題となり、佐藤さんは上司から厳しく問い詰められることになった。
しかし、彼の口から出たのは、

「ただ、どうしてもあのハンバーグを、金曜日に食べたかったんです!」

という悲痛な叫びだった。
思いもよらなかったこの動機に、社内は一瞬静まり返りましたが、
次第に「なんて憎めない奴なんだ」という雰囲気に変わり、
ついには上司も吹き出してしまったのだとか。

その後の展開と社内の対応

もちろん、横領は許される行為ではない。

しかし、佐藤さんのケースはあまりに「愛情深すぎる」動機であったことと初犯だったことで、
会社は懲戒処分を見送り、彼を社食担当に任命するという奇策に出た。

「これでお前は毎日、ハンバーグを提供する側になるんだ」

と、冗談交じりに命じられた佐藤さんは、全社員のために最高の社食を提供することを誓い、
その日から新たなスタートを切った。

驚いたことに、佐藤さんが担当になってから社食の評判はさらに高まり、
外部からの訪問者にまで「この会社のハンバーグを食べに来た」と言われるほどに。

会社はその後、「ハンバーグ横領事件」を社内の笑い話として語り継ぐことにし、
佐藤さんは「ハンバーグ伝説の男」として、その名を残すこととなったのだ。

愛が生んだ奇妙な事件

この「ハンバーグ横領事件」は、確かに犯罪である横領がもたらしたものだったが、
その裏には、愛するものへのただただまっすぐな情熱があった。
最終的に、佐藤さんの行動は会社にとってプラスとなり、
彼の「ハンバーグ愛」は社内の一体感を強める結果となった。

これはあくまでも結果論であり、不用意に美談にすべきではないだろう。
どんな動機であれ、犯罪行為は許されるものではないのだから。

だけど、それでも、時にはこんな風に笑いと温かさが溢れる事件もあるのだ。

次にハンバーグを食べる機会があれば、その一口に込められた深い愛情と、
それが引き起こした奇妙な事件を思い出してくれたら嬉しい。(ぴくと)

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